CMについて用語やら何やら全く知らないって人は読んでみてください(単なる用語解説ですので、知ってる人はスルーでOK)。
もはや見ない日はないってくらいゲームのプロモーションの鉄板施策になっているTVCM。
あれだけ各社こぞってやってるのは何故か?それは効果があるからです。ブーストが難しい昨今、万単位、数十万単位で新規ユーザ獲得ができるのは、TVCMとストアからのフィーチャーくらい。タイトルが「行ける!」となった時、一気に駆け上がるためにCMは避けては通れない施策です。
そんなTVCMについて、これから初めて担当することになった方が知っておいたら損をしないような内容です。コンシューマー系のゲーム会社であれば、周りの諸先輩達がこのあたり教えてくれると思いますが、そうでない場合、いきなり何も知らないまま本番なんてこともあるでしょう。
そんな方に読んでいただきたいです。
で、まず最初に言っておきたいことがあります。
大前提:TVCM=マスプロモーションである
まず最初にこれ。至極当たり前なんですが、凄く大事です。デジタルマーケと勘所が随分違うのです。
普段のインフィード系広告だったりはできるだけセグメントして欲しいユーザを取りに行くという作業ですが、大前提として相手にするのが「マス=大衆」であることに注意が必要です。
詳細に行きます。
■小さくやっても効果は薄い
TVというデバイスで、特定の期間に何回か接触(視聴)してこそ、頭に残りコンバージョンに至るし、それには相応の費用がかかります。
予算が1,000万、2,000万だったらCMなんぞやらずにTrueViewでもやった方がマシです。
クリエティブの検証用に特定のエリアだけでテストマーケとかはアリですが、獲得が目的だったらCMを小さくやっても効果は薄いです。
それよりもある程度の規模で実施した方が単純に費用対効果が高いです。
大量投下により印象に残り、話題が生まれる。そんなのを狙うべきです。
■CMはワンメッセージ
スポットCMであれば、わずか15秒。説明臭いのはダメです。
「ひっぱりハンティング」とか分かりやすいものじゃないと伝わりません。
相手にしているのはセグメントが切られてモチベーションが高いユーザではなく、不特定多数の「マス=大衆」なんです。
「このゲームはこんな魅力とこんな魅力ががあるから、是非遊んでね!」みたいなのはダメですね。
■ターゲティングは出来ない
タイムで買うとか、逆Lで買うとかである程度はターゲティングらしきことは出来ます。
・・・っが、やはりデジタル広告のような精緻なターゲティングは出来ません。
前述の通り、小さくやっても意味がないので欲しいユーザにだけ刺しに行くみたいなことは出来ません。清濁合わせ持つというか、欲しくないユーザも含有されると考えた方がいいでしょう。
■ARPUは絶対下がる
これも考えてみたら当たり前なんですが、意外と見落としがち。
今までは、ターゲティングしてROASをみて効率的に新規獲得してたはずですが、CMはマスに向けて配信しているので色々なモチベーションのユーザが大量に入ってきます。
当然、課金しないユーザも入るでしょう。
モンストのストアレビューは4.0を下回っていますが、つまりはそういうことです。
特に初めてCMを実施するタイトルはより一層この傾向が顕著になるはずです。
PLを組む立場にあるなら、この辺も盛り込む必要があります。
■デジタル広告の予算も潤沢にとっておく
CM時、デジタル広告の獲得効率は物凄く高くなります。
テレビで見て、WEBで見て、コンバージョン。異なるデバイスで接触することによって意識に叩き込まれるってことですね。かき入れどきです。
CMと相性のいい媒体としては、TrueView、Twitterあたり。
また、普段あんまりやらないと思いますがリスティングはCM期は鉄板です。
デジタル広告の予算は感覚的にですが通常時の2〜3倍、またはCM費用の1/3〜1/5位で見ていた方が良いでしょう。
■回数を重ねると効果は落ちる
これも当たり前ですが、何回もCMをやっていると同じ予算で取れる新規の量はどんどん下がっていきます。
初回CMの効果に気をよくして、2回目3回目とやると、とんでもないことになります。
PLにはそれも盛り込むべきでしょう。
■トンマナをがらっと変えるのはアリかも
「回数を重ねると効果は落ちる」に対するカウンターです。
ようはマスを相手にしているので、マスはCMの細かい内容なんてよく見てません。
であればいっそのこと別のゲームとして認識させてしまう、つまりクリエイティブのトンマナ、訴求をガラッと変えてしまうってのも手法としてアリです。
■目標設定は?
感覚値でしかないんですが、全国で放送した場合、かつ初回CMであれば1GRPあたりの獲得件数が250件を超えていれば佳作と言っていいと思います。
つまり、1,000GRPで25万DL、2,000GRPで50万DLくらい。
このときのCPIは600〜700円位だと思います。(CM期間中のデジタル広告の予算含む)
上記はミドル、コア以上のタイトルのイメージです。ツムツムとかニャンコ大戦争とかはまた違う(もっと安い)のかも。
このあと、CMの回数を重ねる毎にどんどん獲得効率が悪化して行く訳ですが、もし前回同様の数値を出せたらそれは戦略とクリエイティブの佳作ってことになります。
詳しくはAppAnnieで推測できる競合のDL数と、広告代理店が教えてくれる競合のGRPを比較してみてください。
■リサーチは手厚くやっとく
このタイミングはノウハウを貯めるチャンスです。数億も投資して、振り返ったときに良かったのか悪かったのかようわからん、という事態だけは避けたいものです。
CM前後で認知がアップするかとか、顧客満足度はどうなるとか。
テーマを決めて調査しましょう。
CM前は忙しくなるので後回しになりがちですが、やっておかないと後で後悔しがちです。
(ちなみに僕がやろうと思って出来なかったことが、CMとTrueViewの相乗効果の証明。
CMしかやらないエリア、TrueViewしかやらないエリア、両方やるエリア、両方やらないエリアのそれぞれの流入数。おそらく両方やるが正解なんでしょうけど。誰かやってみて証明して欲しいです)
■CMとデジタル広告、両方見る
会社によってはここが分業になっていることもあると思いますが、可能であれば両方を俯瞰的に見れる担当が居た方が期間中の効果は上がると思います。
施策を立体的に組み上げて行くイメージです。戦争で言うと、陸軍と海軍と空軍が別々に動くより統合作戦本部があった方が効果的に戦えるようなイメージです。(う〜ん、抽象的だな)
■EXTRA やりたい施策はCM中にやっちゃう
人間不思議なもので、普段は数十万の予算の使い方で紛糾する割に、数億の予算となると意外とザルになるものです(特に経営者)。
こういう時にこそ、温めていた施策、通したかった施策をねじ込んでしまいましょう。
CM期間中は、何やっても効果がよく見えるというのもあります。
中々数値的な効果が追いづらく、かつ上の理解がえられにくいような施策はこういう期間にねじ込んでしまいましょう。
・・・と、こんなところでしょうか。
最初にも書きましたが、とにかく「CM=マスプロモーション」ということです。
普段とは戦い方がガラッとかわるし、またデジタル広告との複合的、立体的な組み方が必要になってきます。
方向性としては最適化ではなく、最大化ってとこでしょうか。
細かいこと書き出すとアレコレ止まらないので今日はこの辺で。